DNAFORM Clone Search Engine

クローンの頒布サービスについて

1. はじめに

ゲノムとトランスクリプトームの10年以上に及ぶ研究は大量の塩基配列情報をもたらしました。ヒトゲノムプロジェクトにはじまり現在までに多くの生物の全ゲノム塩基配列が決定され、さらに、新しくより高速な解析技術の開発により塩基配列決定は加速されています。数々の塩基配列決定プロジェクトの成果として、例えばヒト、マウス、ショウジョウバエ、線虫、シロイヌナズナやイネなどの植物の網羅的なゲノムやcDNAのコレクションが作られました。また、クローニングプロジェクトは初期のcDNAコレクションの形から、転写領域のcDNAをエントリーベクターや発現ベクターにのせた形へと進歩し、ゲノムワイドの機能研究に利用しやすくなっています。さらに、最近新たなタイプのノンコーディングRNAが発見されたことにより、RNAiやmiRNAの発現クローンのリソースも作られてきており、これら大規模プロジェクトの成果である膨大な量のクローンコレクションは研究者の間で広く利用され、研究に役立てられることによりその本来の価値を発揮することでしょう。今後これらの貴重なクローンリソースを有効活用するため、個々の研究者に必要とするクローンを提供する適切なサービス手段が必要とされています。これまで研究材料のやり取りは個々の研究者間で行われてきましたが、大規模プロジェクトの成果である膨大なリソースの配布には専門のリソースセンターや配布機関が必要です。このような組織には、責任もってクローンを維持し、ユーザーのあらゆるニーズに対応して単一クローンからコレクション全体のコピーセットまで必要とされる様々な形でリソースを提供することが求められます。国際的な大規模プロジェクトの共同研究者であり、同時に独自の完全長cDNAクローニング技術による大規模cDNAコレクションの作製者でもあるダナフォームは、公的機関・営利機関に関わらずのすべての研究者に対して最も優れたクローン提供サービスをお約束しています。

2. 公的クローンコレクションの活用

近代科学の概念は、情報の共有、さらに公表された研究成果についてはその材料を他に対して利用可能にすることを基本としています。公的ドメインに登録されたクローンへのアクセスにより種々のことが可能となります。

  • 公的データベースに登録された塩基配列と一致するクローンを見つけられる
  • 研究に必要なクローンを入手できる
  • 興味のあるクローンに簡単、迅速にアクセス出来る
  • 専門のクローン配布機関によりタイムリーにクローンを入手できる

研究対象となる因子の部分的な塩基配列しかわかっていない場合でも、公的データベースから適合するcDNAを見つけ、ひとつないし複数のクローンを入手して研究に利用することもできます。追加の比較対象が必要な場合、あるいは新たな視点から研究を進める場合にも公的なリソースから必要なクローンを入手することができます。リソースを共用することはライフサイエンス発展への入口であり、ダナフォームは皆様のパートナーとなってこの使命を遂行したいと考えています。

3. 公的クローンコレクションの限界

公的クローンコレクションのクローンは現時点で何百万種にものぼります。一般的に非常に良い状態で調整されているとはいうものの、何百万種ものクローンコレクションに全くエラーがないとは言えません。起こりがちなエラーとしては次のようなものが挙げられます。

  • IDエラー:保管されたクローンとその情報が一致しない
  • 注釈エラー:クローンに関連付けられた注釈情報に間違いがある
  • シーケンスエラー:クローンに関連付けられた塩基配列情報に間違いがある
  • 失活・紛失クローン:利用できないクローン
  • コンタミネーション:保管クローンが他のクローンや微生物で汚染されている
  • 情報の遅れ:多くのクローンの注釈情報は作製者による更新が行われおらず、プロジェクト独自のデータベースの情報が古くなっていることがある

リソースの作製者によっては、クローンコレクションやそのデータベースのエラーを訂正する努力を行っていますし、またクローンの配布者もクローンエラーや注釈情報エラーの記録を管理し、それらのエラークローンを配布しないようにしています。 しかし、どれだけ努力をしても全くエラーのないクローンコレクションはありませんし、品質管理の行き届いたコレクションにさえ長い間には失活するクローンが出てきます。また、リソースセンターや配布機関に提供されたオリジナルプレートにIDエラーが起きると、多くの場合正しいIDのクローンに置き換えることが不可能になります。そのため、公的クローンのユーザーは、自身の実験に使用する前にそのクローンを確認するよう勧められています。間違ったクローンを入手あるいは使用するリスクを回避するためのもっとも簡単な方法は、クローンの出荷前にIDチェックを行っている配布機関からクローンを入手することです。最も一般的には、配布機関ではクローンの一部分の塩基配列を実際に読み、それをデータベース上の該当クローンの塩基配列情報と比較してIDの確認をしています。IDチェックによってデータベース上の注釈情報や塩基配列情報のエラーを除くことはできませんが、必要としているクローンを確実に入手することができます。またIDチェックはクローンを単体で入手するときのみ実行されていて、プレートごとあるいはコレクション全体を出荷する場合は、費用の関係上通常IDチェックは行われず、リクエストがあった時のみ行われるようになっていることにご注意ください。

4. 必要なクローンの見つけ方

公的ドメインにある大量のクローンの中から特定のクローンを探すには別のデータベースもサーチすることが必要です。RIKEN FANTOMやNIH MGC/IMAGEのような多くの大規模プロジェクトは独自のクローントラッキングと注釈データベースを作製しています。さらに、多くのクローンの塩基配列はNCBIやEMBLE、DDBJに登録されていて、それらのデータベースで検索することが可能です。また多くの場合、配布機関もクローン情報を提供するための独自のデータベースを作製しています。ダナフォームでは、お客様をサポートし、クローンサーチ、選択、発注などの作業をできるだけ簡便にするためにDNAFORM Clone Search Engineを構築しました。DNAFORM Clone Search Engineは英語、日本語の両方に対応し、下記の関連情報からご希望のクローンを検索できます。

  • クローンID、Gene IDによる検索:あらゆるクローンIDまたはGene IDにより当社のcDNAコレクションの検索が可能です
  • プレート上の位置による検索:クローンをプレートで購入したお客様のニーズに対応し、クローンまたはプレート特有の座標によりクローン情報をデータベースから検索します
  • BLASTによる検索:当社のコレクションに含まれるクローンと部分的あるいは全長の塩基配列が一致するクローンを当社のデータベースから検索します

DNAFORM Clone Search Engineに登録されているすべてのクローンはNCBIの最新の注釈情報にリンクされています。現在DNAFORM Clone Search EngineにはRIKEN FANTOM、RIKEN human cDNA、RIKEN human ORF entry clones、RIKEN honeybee clone collection、NIH MGC、NIH ORFeome、NKI shRNA projectの情報が登録されており、さらに最新の情報とリソースを提供できるよう継続的に更新されています。

5. ダナフォームとGeneserviceのゲノムリソースの概要

ダナフォームと英国におけるゲノムリソース配布のリーディングカンパニーであるGeneserviceは、世界で最も包括的なゲノムリソースを提供することを目的として提携しました。現在1600万種のDNAを管理しており、さらに新しいリソースの拡充、新規ORFクローン、ヒトshRNAなどのRNAi発現クローン、ファージディスプレイライブラリーに代表されるプロテオームリソースなど革新的な製品ラインナップの拡大を図って研究者の方々と絶え間なく協力しています。現在当社が行っている主要プログラムには下記に挙げるものがあります。

RIKEN FANTOMクローンコレクション
単一の生物種からなる世界最大のcDNAコレクション
cDNAリソース
RIKEN FANTOMクローンコレクションの他にMGCコレクション、IMAGEリソース等のcDNAリソース。ヒト、マウス、ラット、ウシ、ニワトリ、ショウジョウバエ、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュ、線虫やRIKEN Honeybee cDNAコレクションが含まれます。
DNA Aliquots
ヒト、マウス、ラット、イヌ、ウシ、ニワトリ、出芽酵母、フグの、増幅ゲノムDNA溶液
ゲノムDNAクローン
ヒト、マウス、イヌ、ブタ、ニワトリ、ショウジョウバエ、フグ、線虫のゲノムDNAクローン
ORFクローン
線虫、カンピロバクターの全ORFクローンコレクション。NIH ORFeome projectのヒト、マウスORFクローンの配布も開始しました。
プロテオームリソース
興味のある分子に対する抗体をスクリーニングするためのファージディスプレイライブラリー。ヒト単鎖可変領域合成フラグメントライブラリーを使って、ファージディスプレイとターゲットセレクションを用いたほぼすべての標的分子結合因子の抽出が可能です。
miRNA/RNAi
ヒトmiRNAセットと線虫RNAiリソース。NKIの新規のヒトshRNAリソースを含みます。
サンガー
有名なサンガーセンターのリソース。ヒト22番染色体の予測ORFとマウスゲノムクローンを含みます。



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